地震にも壊れない住宅。ただそれだけではペットとともに住み続けるのは難しいと思います。ライフラインの途絶にも対応しなければなりません。
ライフラインの問題を考える上で、ポイントは3つあると思います。最初に、それがどの程度重要なのか。次に、それが他の手段でどの程度代替できるのか。そして復旧速度はどうか、という点です。
それぞれ、「重要度」「代替度」「復旧度」と呼ぶことにします。
これをライフライン毎に整理すると、次のようになると思います(ここでは、在宅酸素療法を行っている方がいるなど、特別な事情がある場合を除いています。)
種 類 | 復旧度 | 主な用途 | 重要度 | 代替度(代替手段) |
水 道 | やや遅い | 飲み水 | 大 | 大(ペットボトル 支援物資も早い) |
トイレ等 の生活用水 | 中(都市部で大) | 小(トイレパック等) | ||
電 気 | やや速い | 照明 | 大 | 大(LED携帯照明等) |
空調 | 季節に依存 | 小(石油ストーブ等) | ||
携帯端末 | 大 | 中(乾電池式充電器) | ||
都市ガス | 遅い | 調理 | 中 | 大(ボンベ式コンロ等) |
風呂 | 小 | 極めて小(自衛隊天幕風呂?) | ||
情報通信 | 重要度は大 情報収集については携帯ラジオによる代替度が大 |
こうして見ると、案外忘れがちでも重要度が大きく、代替度の小さいのが「トイレ等の生活用水」だということが分かります。阪神・淡路大震災では大きな問題でした。
東日本大震災では、あまり大きく取り上げられなかったようですが、特に、大都市圏では相変わらずとても大きな課題です。
その備えとして、「3階建てマンション」ではオール電化を採用しました。実は、オール電化住宅は、大量の生活用水を自動的に備蓄しているのです。電気温水器やエコキュートのことです。いずれも200〜300リットルの水を常時持っています。これにバスタブの水を合わせると、相当回数分のトイレの水を確保していることになります(熱湯に注意が必要です)。
電気温水器の非常用貯留水取り出し口
「戸建て住宅」では、太陽熱温水器を採用しました。太陽熱温水器も、大量の生活用水を自動的に備蓄することができます。建設が東日本大震災の後でしたので、オール電化は諦めました。最近のシステムは、屋根に乗るのは集熱部分だけですので、見た目もスッキリしています。
屋根の上に見えるのが集熱部分
一番新しい「5階建てマンション」では、オール電化はやはり電力問題で諦めざるを得ず、太陽熱温水器も難しいということで、次善の策ですが1トンの雨水タンクを設置しました。しかし、4階や5階に住む人にも階段で水を運べということになってしまい、やや心残りがあります。
ガスについて、お風呂は代替手段がほとんどありません。季節にもよりますが、せっかく水道が復旧しても風呂が使えないというのは、相当の我慢を強いられることになります。
「戸建て住宅」では、都市ガスエリアにもかかわらず、あえてプロパンガスを採用しました。プロパンガスは、被災地に向かう救援隊が携行するほど、災害時には圧倒的に優れたエネルギー源です。やや割高になるという点については、太陽熱温水器の採用で解決できます。
「5階建てマンション」でも、バルクによるプロパンガスの採用を検討しましたが、専用住宅とは比較にならない量の可燃性ガスを身近に置くという点について、理屈では大丈夫だと思っても、踏み切れませんでした。また、入居者にとって割高になる点も解決できません。
中越沖地震での復旧工事
電気は、比較的復旧の速いライフラインです。とはいえ、特に寒い時期の暖房の問題があります。専用住宅なら、電気を使わない石油ストーブがあればある程度解決できますが、マンションでは難しいでしょう。(禁止されている場合も多いと思います)
この問題はなかなか難しいのですが、まず、住宅の気密性や断熱性を高めておくことが大切だと思います。高気密・高断熱住宅なら、(首都圏では)昼間は我慢できる時間が相当あると思います。
「5階建てマンション」は、1階に店舗が付属しています。そしてその経営者と、災害時の特約を結びました。具体的には、災害時は、この店舗内で石油ストーブを炊きながら暖かい食事を提供するというものです。とにかく一度暖まってもらい、あとは自分の部屋に戻って布団にくるまって寝るという具合です。「3階建てマンション」も隣接していますから、同じ対応をとることにしています。
また、2棟のマンションはいずれも、屋上に8KWの太陽光発電設備を備えています。「5階建てマンション」では、自立運転時の非常用コンセントを1階のエントランス内に設けることができました。昼間に限られますが、スマートフォンの充電ぐらいの電力は十分に確保できます。
5階建てマンションの太陽光パネル
なお最近、家庭用の蓄電池をはじめ、省エネのための様々な技術が開発されています。一層の低コスト化が進むことを切望します。
最後にもうお気づきでしょうが、ここでペットが登場することは少ないです。いかに人間がライフラインに頼り切っているかということなのでしょう。
なお、ここでは「避難所には行かない」という立場をとっています。しかし、何事にも絶対ということはあり得ません。万一の場合の対応については、良いサイトがたくさんあります。是非一度ご覧ください。
非常用の備蓄など 詳しく紹介された良いサイトがたくさんありますので、多くはそちらに譲ります。ここでは、ちょっと盲点になっているかもしれない点についてだけ、私見を含めて触れることにします。 食料について。乾パンがあるから大丈夫、というのは早計です。乾パンは、本当の意味での非常用にすぎず、すぐに喉を通らなくなってしまいます。余談ですが、緊急時に活動する部隊で、最も給食の体制が充実しているのは、自衛隊ではないかと思います。動くためには食わねばならない、が徹底されているのです。 しかし、一般の家庭でも決して負けることはないはずです。お米や乾めん、パスタ類などの買い置きは多くの家庭にあるはずです。冷蔵庫の中身も、扉の開け閉めを最小限にとどめれば、かなりの時間は大丈夫です。熱源(ボンベ式のコンロ、できれば複数)と飲料水があれば、普段と違ったとしても、結構な食事が何度かはできるはずです。 また、最近のフリーズドライフードはとても美味しいです。職場で幾晩か過ごすことは何度もありましたが、最近一番人気のあったのがこれでした。少し高いですが、保存性も非常に良いのでお奨めできます。 家具の転倒防止について。ケガをしないために、というのが主な理由ですが、同時に、気持ちをなえさせないためにも重要だと思います。普段の生活の中でも、あまりにひどく散らかってしまうと、片づける意欲がなくなってしまうことがあると思いますが、それを何倍にもした状態を思い浮かべてください。 ケガをしない、そして家の中を無茶苦茶にしないためにと考えると、対策に重点を置きやすくなるはずです。扉の開きにくい作り付けの家具が一番なのですが、そうでなくとも工夫はいろいろ出来ると思います。 |