左の写真をご覧になって、ごく普通の牧場の姿だと感じるかもしれません。 本当に、この牧場が普通であってくれたらと思いますが、実はここ、日本では非常にまれな完全放牧型の牧場。旭川にある「斉藤牧場」といいます。 まず、この牧場のことをご紹介します。 (ここで使用している写真は、2012年7月に撮影したものです) 斉藤牧場の公式HPを合わせてご覧ください! |
|
牧場にしては山っぽいし、地面がデコボコしているのに気がつかれたと思います。また、よく見ると結構岩が出ていたりします。 普通の牧場は、木を伐り、重機で岩を取り除き、土を平たんにならして牧草の種を巻きます。 それに対して斉藤牧場では、牛が山から牧草地を拓きました。「蹄耕法」と呼ばれています。 牛が歩き回ることによって、荒れた山肌を草地にかえていったのです。 |
|
普通の牧草地には牧草しか生えていません。しかしここでは、いろいろな草が生えています。この時はあちらこちらに黄色い花が咲いていました。 また、草の丈が一様に低いのも特徴です。何故かといえば牛が食べていくから。バリカンで刈るように食べるそうです。 |
|
とても樹木の多い牧場です。もともとあった樹木の3分の1は、そのまま残っているそうです。暑い日でしたので、木陰の涼しさが本当にありがたく感じました。 季節がくれば、森の恵みであるキノコもたくさん採れるとのことです。 |
|
牛の通り道です。こうした道が、あちらこちらに見えます。 牛は、朝からこの放牧地に入り、一旦山を登り、夕方になると再び降りてきます。その間に、様々な草をお腹一杯に食べてきます。 昼間、牛は自由に行動します。 |
|
牛の糞です。牛の糞は、特に尿と混ざるとかなり悪臭がするものですが、この牧場では、まったく臭いがしません。牧場を渡ってくる風は澄み切っています。土が肥えているので、牛の糞尿は自然に分解されて土にかえっていきます。 そしてそこに生える草の栄養となり、それをまた牛が食べていくことになります。 ほとんど完全な循環が成立しています。 |
|
ちょうど牛たちが、山を下りてきました。丈の低い草を舐めるように食べています。 高価な配合飼料は、一切与えていないそうです。ここに生える草だけで、牛は立派に生きています。そればかりか、この牛たちはとても長生きするそうです。 |
|
この写真を見て、なにか気になることがありませんか? 真ん中の牛はオスです。オスの乳牛(というのは変な言い方ですが)は、そうお目にかかれません。ここでは人工授精は行わず、自然繁殖で子孫を残していきます。 このオス牛について、本当に驚くような話を聞きました。なんとこのオス牛、付近にヒグマの気配を感じると、メス牛と子牛に円陣を組ませ、自分はヒグマのいる方に向かっていくそうです。 実は、いまだに信じられません・・・ |
|
牧場主である、斉藤さんです。かなりのご高齢のはずですが、息もきらせず斜面をズンズンと登りながら、牧場のあちらこちらを案内していただきました。 斉藤さんの口からでる言葉は、とても重みがあります。信念を積み重ねた年輪の重さだと思います。 「辛抱しろ」「欲を出すな」「自然を信じろ」 斉藤さんは、何度も何度もそう言いました。 |
|
牧場の中の森です。この先に沢があって牛の水飲み場になっています。 沢を流れる水は、とても清らかでした。 川と牧場の関係を考え始めてからの最大の収穫は、この斉藤牧場を知ったことです。 |
|
斉藤牧場の牛乳、とても美味しいです。季節によって微妙に味が変わってくるのも楽しみです。 冷蔵便で全国に発送していますので、誰でも手に入れることができます。スーパーで売っている牛乳よりかなり高いですが。 斉藤牧場の放牧地の手入れは、牛が自分でやっています。積雪期はともかく飼料も不要、糞尿の処理も不要です。投下労働力も含めたコストは、非常に低いのではないかとと思います。採れる牛乳の量はとても少ないのですが、採算の面でも、優れた経営方法ではないでしょうか。 |