スラリー撒きと草地更新


 北海道に単身赴任してから、「マイペース酪農交流会」に参加させてもらっています。この交流会には、マイペース酪農
を実践している酪農家、導入を目指す酪農家、酪農を志す若者、酪農の研究者などの皆さんが集まります。
「マイペース酪農とは」参照)

 門外漢である私が参加した理由ですが、実は私、この交流会に参加するまで、酪農を甚だしく問題視していました。
川をぶっ壊しダメにする元凶だと考えていたのです。つまり最初は、「まずは敵を知る」ためだったのです。

 酪農(正確には一部の酪農)を問題視する考えは、まだ氷解したわけではありません。
    

 「牛との共生」ページと重複しますが、まずはスラリー撒きから。

 私がこれを知ったのは、西別川で釣りをしていた時に嗅いだ強烈な異臭からでしたが、その後も、何度も何度も、中標津
のアパートで朝起きた時にも、車の運転中にも、春と秋には飽きるほど嗅がされます。

 スラリーそのものの写真はありませんが(あっても撮りたくない)、

 これがスラリーを撒いている現場です。

 トラクターで引いて使います。

 言い忘れましたが、スラリーとは、「乳牛の糞尿の混ざった液体状のもの」です。それをこのマシンで畑に散布する訳です。
臭いのは当たり前ですね。最近は、土壌表面近くで撒く方法など改良されているようですが、それでもかなり酷いものです。
 知人に、根室方面へのドライブ中に強烈な奴に直撃され、酷い頭痛で運転できなくなった、という人がいます。

 (近年、スラリーを一定期間爆気してから撒く方法があるそうです。この場合、臭気はほとんど問題にならないレベルまで
抑えられるとのこと。)
 

 さて、この臭いスラリーをなぜ撒くのかということが、特に河川環境を考えるうえでのポイントになります。

 「畑、ここでは特に牧草地へ肥料を与えるために、撒く」、というのが一つあります。
 これなら問題は臭気だけなのかもしれません。しかし、もう一つあるように思います。それは、

 「廃棄物である牛の糞尿を処理するために、撒く」 というものです。

 スラリーが肥料になることは間違いないようです。でもそれは、「適量に」という前提があるはずです。適量を超えて撒けば、
もう立派な環境問題になってしまいます。


 私は長い間、乳牛は牧草で育てるものだと思っていました。夏は緑一面の牧草地に放牧され、冬は乾し草を与えられて
育っている、とばかり思っていました。しかし、実は違うのです。

 多くの牛は、牧草とともに大量の配合飼料で育てられていました。配合飼料とは、主に輸入された穀物です。

 牛の糞尿の元は、牛が食べた飼料です。もし牛が、畑で採れた牧草だけを食べていたのなら、牛の糞尿を畑に戻すことは
とても合理的なことだと思います。でも、牛が海の向こうから持ってきた穀物も一緒に、それも大量に食べていたとしてら、その
牛の糞尿を畑に戻すことが合理的と言えるでしょうか?


 「輸入された配合飼料から出た分のスラリーは、廃棄物である」と言っても、過言でないと思います。

 なぜ配合飼料が必要なのか、については「マイペース酪農」関係のページに譲ります。


 次は、草地更新です。

 牧草地(牧草地には、牛を放すための「放牧地」と、もっぱら牧草を収穫するための「採草地」があります)は、一定の期間
をすぎると雑草がはびこってくる。そのため、定期的に表土を草ごと剥ぎ取り、雑草を根絶やしにして、新しい牧草地にする
のが「草地更新」です。

 具体的は、次のような手順で行われるそうです。「重機で表土をはぎとる」、「除草剤を全面に散布する」、「一定期間放置
する」、「雑草が生えたところで再度除草剤を全面散布する」、「牧草の種を撒く」、というものです。

 ここで河川環境の面から問題になるのが、「除草剤の散布」と「裸地からの土砂流出」でしょう。

 これは、西別川上流部での草地更新の現場です。

 流れの側から撮ったものです。堆積した土砂が酷くて、これ以上
                              近づけませんでした。

 特に川の間際まで裸地にしてしまえば、こうなってしまうのは目に見えています。土砂と一緒に、大量の除草剤も川に
流れ込んだ
であろうことを考えると、寒気がしてきます。

 本当に「草地更新」が必要なのでしょうか? これについても「マイペース酪農」関係のページに譲ります。

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