マイペース酪農
「マイペース酪農」とは、「YOURペースではない酪農」のことだと思います。
ここでいう「YOU」とは、国や農協のこと。むやみに国の施策や農協の誘導には乗らずに、自分で考え、自分にとって理想とする
酪農を目指す、という意味だと思います。
創始者である三友盛行さんは、「地域の風土により添った酪農」という言い方します。素敵な言い方だと思います。
具体的には、どんな酪農なのでしょう。私の認識できた範囲ですが、
1 牛は、牧草地の広さが許容する数しか飼わない(だいたい1ヘクタールに1頭とのこと)
2 草のある季節は、昼夜を問わず放牧する
3 穀物飼料は、極少量とする(あるいはまったく与えない)
4 スラリーは撒かずに(作らずに)、糞を堆肥化してから牧草地(採草地)に戻す
5 草地更新はしない(三友さんの牧場は、入植以来40年にわたり更新していないとのこと)
もし、北海道が常夏の土地なら、おそらく一年中放牧するのでしょう。でも冬があるから、冬の間は牛は牛舎に入れ、乾し草を与え、
そこで出る糞尿は人間の手で土地に戻す、ということだと思います。
つまり、「土」 「草」 「牛」の循環の中ですべてを完結させ、人間はその中で出る「余録」をいただく。それがミルクであり、その素は
太陽エネルギー、という考え方だと理解しています。まさしく、地域の風土により添っています。
(この究極の姿が、斎藤牧場(「牛との共生」参照)でしょうが、斉藤さんは、必要に迫られて(なにしろ山ですから)実践したのに対し、
三友さんは、かくあるべしという想いがあって実践されたのだと思います。)
一方、メガファーム、ギガファームと言われる、大規模化を指向した方法は、
1 牛は牧草地の面積とは関係なく、とにかく、たくさん飼う
2 牛は、一年中牛舎の中で飼う(搾乳の効率を考えれば、たしかに合理的です)
3 穀物飼料を大量に与える(乳量を増やすことができるそうです)
4 糞尿はスラリーにして、なんらかの方法で処理する(穀物を大量に与えられた牛の糞は水分が多く、堆肥にできないとのこと)
5 草地更新は頻繁に行う(必ずしも規模とは関係ないかもしれませんが、土のバランスが崩れると雑草が増えるそうです)
マイペース酪農を志し、実践している酪農家の皆さんの集いが、「マイペース酪農交流会」です。
集合します(左の端が三友さんです。これは若い人向けの集まりでの写真です)
会場に選ばれた牧場を見て回ります
堆肥の状態を見ることもあります(全然匂いません)
放牧地に落ちている牛の糞を調べます(牛の健康状態が分かるそうです)
本当によく土を観察されます(すべての基本だとのこと)
牧場から流れ出る水はきれいです
牛も気持ちよさそう
持ち寄ったもので昼食、そして意見交換(参加者は、必ず一言発言しなければ
なりません。また、地元テレビ局の取材がよく入ります)
この酪農は、川を壊さない。そう確信しました。
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