酪農と地域経済その3


  大資本で大規模酪農をやると、どうなるんだろう? 時々、そんなことを考えます。特に、「ここは離農した跡で、あそこは来年にも離農
 するそうだよ」、なんていう話を聞いた後はそうです。


  トヨタが農業に参入というニュースがありました。工業製品でのノウハウを一次産業に適合できるのだろうか? 素人の第一感としては
 そんなところですが、あのトヨタが乗り出すというのですから、それなりの成算があるのでしょう。

  では仮に、理由とか可能性とかは置いておいて、トヨタが酪農に参入したとしたら、どうなるでしょう? 


  多分、安全で美味しい牛乳(あるいは乳製品)を、効率よく(つまり安く大量に)生産するのでしょう。その1での想定を、トヨタ一社で全部
 やったとしたら、今の酪農家50人を社員(あるいは共同経営者?)として雇用して、十分な給料を支払い、福利厚生も充実させるでしょう。
 もちろん、河川へ糞尿を垂れ流したり、街中を異臭で包むようなことはしないはずです。河畔林の再生に取り組んでくれるかもしれません。

  町のお祭りでは大スポンサーになって、花火大会に3尺玉ぐらい上げるでしょう。多額の税金で町は潤うでしょうし、体育館の一つや二つ
 建ててくれるかもしれません。そう考えると、良いことばかりに思えます。

  
  でもやっぱり、トヨタも営利企業には違いありません。もし、色々な環境が一変して赤字を垂れ流すような状態に陥ってしまったら、トヨタと
 いえども撤退せざるを得ないはずです。トヨタならまだしも、それがブラック企業やウオール街のハゲタカみたいな企業だったら、ある日突然
 いなくなった、なんてことになりそうです。問題はその時です。

  大型店舗が出店して、古くからあった商店街が寂れきった後で、その店舗が撤退してしまい廃墟だけが残った。というようなことが、広大
 なエリアで起こるわけですから、そのダメージは計りきれません。多分、二度と元には戻せず、地域全体が壊滅してしまうと思います。

  これらは極端な話かもしれませんが、今現実に起こっている大規模化には、多かれ少なかれ、こうしたリスクが潜んでいると考えるべきで
 しょう。もちろん、一人の酪農家が元になって大規模化している牧場が、大資本ならするような「撤退」を簡単にできるはずありません。それ
 でも、大規模化すればするほど、万一の場合のリスクが大きくなると思います。


  マイペース酪農交流会で、「もし乳価が半分になったら食っていけるか?」という話題がありました。「食っていける」という人もいたように
 覚えていますが、バランスシートの小さい(負債の小さい)家族経営の方が、環境の変化に強い部分があるのだと思います。
  
  今年(2014年)になって、中標津の町周辺の農地に、蕎麦畑が目立つようになりました。背景はよく分かりませんが、ひょっとしたら、農家
 の方のリスク分散の試みなのかもしれないと思いました。こうした小回りの利くやり方も、負債の少ない(ない?)家族経営の特徴ではない
 でしょうか。

    
  実は私も、牛を一頭だけ飼って酪農家の真似事でもしてみようかと思ったことがあります。(旭川の斎藤牧場は、牛一頭から始めたそう
 です) 

  ところが、それが出来ないのです。 ぜ~んぜん、ダメなのです。

  まだ続きます。

  牛一頭でも食っていける??

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