酪農と地域経済
「マイペース酪農がなぜ主流にならないのか。それは地域経済への貢献が小さいからだ」
これは交流会に参加されていた、ある獣医さんの発言です。その意味は、私にも分かるようになりました。
多数の牛を飼い、多くのミルクを得ようとすれば、大きな牛舎、大規模な搾乳プラント、多数の機械器具、そして膨大な量の飼料が
必要になります。また、糞尿の処理にも、広い牧草地を草地更新するにも、多額の費用が必要です。さらに、家族経営ではとても手
が足りませんので、多くの従業員を雇用しなければなりません。
こうしたことが、大量のミルクを生産することとは別に、地域経済を潤していることは間違いないと思います。
そして、大規模化と対局にあるマイペース型酪農の、地域経済への貢献度が相対的に小さいということも、あたっているように思い
ます。
大規模化した農家から、「我々は大きなリスク(負債)を抱えながら地域経済に貢献しているのに、マイペースの人たちは、自分の
ことしか考えていないのではないか」 という声があがっても、不思議ではないと思います。
次は、行政の立場になって考えてみます。
百戸の農家が5千ヘクタールの土地に散在し、全部で5千頭の牛を飼っているとします。それを、千ヘクタール毎に集約した5つの
法人が、全部で1万頭の牛を飼う形に変えたとしたらどうでしょう。酪農家百人は、それぞれ20人づつ5つの法人に就職するとします。
そして、全員が町に住んで、毎日牧場へ通勤するとします。
この形態になると、町の財政負担を大きく縮小することができるかもしれません。いわゆる、コンパクトシティです。例えば、今は各
農家に編みの目のように伸びている道路は必要なくなるかもしれません。水道の管網もシンプルなものにできるでしょう。学校の集約
も簡単です。また、万一の場合を想定した防災対策も、グッと楽になるでしょう。
さらに、延々と伸びる電柱も必要なくなり、電力会社が喜ぶかもしれません。
ここの本旨である、川と魚の立場になって考えても、大規模化イコール悪とは、一概には言えないと思います。
例えば糞尿の処理にしても、これまで以上に丁寧な対応が求められるし、また技術的には可能だろうと思います。草地更新を行う
としても、規模が大きい分、川のそばの作業効率の悪い場所までは必要なくなり、ひょっとすると、河畔林に戻せるかもしれません。
もちろんこうしたことは、大規模化した牧場の経営が順調にいっている、ということが大前提です。
現状は、その大規模化した牧場の経営自体が厳しいということですから、前述したことは、絵に描いた餅になってしまいかねません。
さらに、TPPなんてものまであるのですから・・・
ああ、なんだか難しくなりました。とりあえずはここまで
最後に、私の住む地域を、鳥になって見てみてください。