酪農と地域経済その2


  スラリー撒きと草地更新は、河川環境を破壊する元凶になりかねません。

  であるのに、そこに物凄い補助金が投入されていると聞いて驚きました。この補助制度、なんと補助率90パーセント(95%の場合も?)
 だというのです。酪農だけでなく、農林漁業には多くの補助制度があることは想像していました。しかしその補助率は、常識的に考えて、
 三分の1とか二分の一だろうと。それがなんと、9割補助!(スラリーについてはスラリー貯蔵施設に対するもの)

  一千万円の事業が、たったの百万円で出来てしまうのです。これでは、その事業の効果やリスクを考える気にもならないと思います。

  さらに、農協のことがあります。


  農家の人の話を聞いていると、どうも聞きなれない言葉が頻繁に登場します。「クミカン」という言葉です。なんのことだか分からないので
 聞いてみると「組合勘定」のことだそうです。それでもよく分からないので少しづつ突っ込んでいくと、だいたいこんな感じです。

  農家はそれぞれ農協(地域毎に管轄エリアが決まっているので、農協を選ぶ自由はないようです)に口座を開く。農産物はすべて農協を
 通して販売され、その売上は組合口座に入る。必要な資材はすべて農協を通して購入し、その費用は農協口座から引き落とされる。建設
 や土木工事(牛舎の建設や草地更新等)も農協を通して発注され、融資が必要な場合はこれも農協が行い、返済は農協口座から引き落
 とされる。そしてどうやら、補助申請とその処理も農協が行い、相殺される。

  農協とは、銀行であり、商社であり、ゼネコンであり、役所でもあるようです。

  「クミカンが赤字で大変だ」、「組合から、生活費はいくら欲しいんだって聞かれた」、「組合がやれってしつこく言ってくるんだよ」、「組合
 からアウトと言われれば、離農するしかない」、「うちは組合の正会員じゃあないから、補助金が使えない」 農協はクミカンを通じて、農家
 の死命を握っているのかもしれません。

  そして農協側に立って、農協の利益という点から考えてみると、銀行としては融資を増やしたい、商社としては多くの資材を扱いたい、
 ゼネコンとしては多くの工事を受注したい、ということになるのでしょう。しかもその多くに、補助金という裏打ちがあるのですから。


  個人事業主でも法人でも、普通は、一つの団体にすべてを丸投げするなんてことはあり得ないと思います。資材や工事はより安いところ
 に、融資はより条件の良いところに、が常識でしょう。そして一つひとつの事業について、その効果とリスクをギリギリと考え抜くものです。
  
  補助金と農協は、そうした当たり前のことを妨げる障壁になっているような気がしてなりません。

  
  なお、零細な個人事業であれは、面倒なので丸投げという選択肢もあるかもしれませんが、法人、ましてや上場企業でそんな経営を
 やっていれば株主が許してくれません。それに社会的な責任も大きく、河川の汚染なんか引き起こしたら、企業の存続に関わる問題に
 なってしまうかもしれません。

  その1で、「大規模化は、悪いことばかりでないかもしれない」としましたが、ここでも同じようなことが言えると思います。

  ただし、上手くいけば、という大前提があるのも同じです。

  この話題、まだ続きます。

 

   
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