ニジマスのこと
私には、ニジマスというと、「釣り堀の魚」というイメージがあります。
子どもの頃、親に連れて行ってもらい、竹の一本竿に太い糸、それにイクラをつけて釣った魚がニジマスでした。今でも、本州の管理
釣り場の主力で、たくさんのニジマスが群れている管理釣り場がほとんどでしょう.。(スレまくっていますので、なかなか手強いですが)
さて、1997年に始まった北海道OLM。西別川での釣りが中心ですから、釣れる魚はアメマスが大半、それにヤマメやオショロコマが
混ざります。でも、実は一番釣ってみたいと誰もが思っていたのが、野生化したニジマスでした。ハンドルネーム「ムラサさん」の釣った
大ニジマスは伝説となって、その後、そのポイントは「ムラサポイント」と呼ばれたほどです。
なにしろ野生化したニジマスのファイトは素晴らしく、引きの強さは他の渓魚の倍(あくまで感触)、おまけに派手にジャンプするので
実に楽しい魚です。ただ、それ以上に「ニジマスを釣ってみたい」と思ったのは、ニジマスの数がとても少なく、滅多に釣れない魚だった
からです。
実際のところ、十数人が丸二日以上釣りまくって、ニジマスは一尾も釣れないというのが普通でした。それくらい、滅多にお目にかか
れない魚だったのです。西別川のニジマスは、釣り堀の魚ではないニジマスでした。
1999年の春に釣った西別川のニジマス(残念ながら取り込みに失敗)
私は一度だけ、西別川で大きなニジマスを釣ったことがあります。その時は嬉しくて、当時のパソコン通信のフォーラム「瀬音」に、
「虹の神」というタイトルで記事を投稿したぐらいです。
北海道に来て、最初にニジマスを狙いに行ったのは阿寒川でした。大きなニジマスが釣れるので有名なところです。
たしかにここは良く釣れます。阿寒湖のアメマスにふられても川のニジマスがある、という保険的な意味も含めて、年に何回か
足を運んでいます。(阿寒湖は、この地域では珍しい遊魚料の必要な釣り場ですが、湖と川が共通なので便利です。)
バリバリの成魚放流でヒレの丸いの多いですが、私にはあまり抵抗がありません。なぜって、管理釣り場のニジマスは普通
そうですから。
阿寒川は利水の進んだ川で、途中で完全に水の切れる閉鎖空間です。そこに成魚を放流して有料で釣らせているのですから、
川全体が管理釣り場なのです。
今年(2014年)、然別湖にミヤベイワナを釣りに行ったのですが、運悪く荒天でクローズになってしまいました。帯広に宿をとって
いたので時間を持て余し、一緒だった友人に「どこか釣れるところない?」と駄々をこね、ようやく濁りのない小さな川を見つけました。
見たところ、いかにもヤマメの棲みそうな、私好みの小渓流です。
やってみると、早速小さな魚がかかりました。ヤマメだろうと思っていると、どうも様子が違います。よくよく見るとニジマスでした。
友人が、十勝川水系の様子を話してくれました。この辺りは、どこもニジマスばかりだと。
翌々日、用事を済ませての帰り道、十勝川水系ではありますが、先日の川とは相当離れた別の川に立ち寄りました。中標津から
は、阿寒湖の反対側にあたるところです。本流への合流から少し上がった支流で、渓相はいかにもヤマメの川。でも、やってみると、
ニジマスが釣れました。釣っても釣ってもニジマスです。数百メートルの区間で、小さいのを含めると50尾近く釣ったと
思いますが、それがなんと全部ニジマスなのです。「ニジマスも混じる」ではなく、「ニジマスしか釣れない」のです。
数週間後、折よく横浜から友人が遊びに来てくれました。そこで二人で、この支流の上下や別の支流、さらには本流筋
にも竿を出しましたが、どこもニジマスだらけでした。他の魚は、オショロコマはおろかウグイも釣れません。
岩盤の切れ目の深み。魚がいくつも見えましたが、多分、全部ニジマス
仕事で知り合った方がたまたま大の釣り好きで、話を聞くことができました。その人の知る範囲では、釣具屋さんが中心
になって釣り人からお金を集め、それでニジマスを放流しているとのこと。それにしても、異常なほどたくさんいます。そして、
在来種はまったくその姿を見せません。
十勝川水系にはダムが多く設置されています。サクラマスの遡上が絶たれヤマメは全滅したのかもしれません。その代わり
ということなのでしょうか。たしかに、これだけ立派な川に渓魚がいないというのは、とても悲しいことです。
しかし私には、今の状況も、極めて異様なものに感じてしまいます。
北海道庁では、「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」で、ニジマスを、「生物多様性に著しい影響のある種」として
指定することを検討しているそうです。そして、パブリックコメントの段階では、釣り人を中心にたくさんの反対意見が提出された
とのことです。
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